設備の見積書を前にして、「この投資に使える補助金はどれだろう」と考えていませんか。上限1,000万円を超える補助金は複数あり、名前も似ています。
設備投資の補助金の選び方のコツは、上限額ではなく「その投資で何を実現したいか」から考えることです。制度ごとに後押しする投資の目的が決まっています。目的が合う制度を選べば、上限の大きい補助金も十分に活用できます。
この記事では、中小企業がよく検討する4つの制度を、公的機関が紹介している活用事例とあわせて解説します。制度の数字は、2026年10月14日に各制度の公募要領と公式サイトで確認したものです。
設備投資の補助金の選び方は「投資の目的」から始める
4つの制度は、どれも設備投資を支援します。違うのは、どんな目的の投資を後押しするかです。まずは早見図で、自社の投資がどこに当てはまるかを見てください。
投資の目的と規模で候補を絞る早見図(出典:中小企業基盤整備機構・各補助金事務局の公募要領を基に当社作成)人手のかかる工程を設備に任せたいなら、省力化投資補助金(一般型)が基本です。新しい製品や市場に挑むなら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が合います。
売上高100億円をめざす企業の大型投資には成長加速化補助金があります。拠点の新設のような数十億円規模の投資には、大規模成長投資補助金が用意されています。
活用事例で見る4制度の使い方
目的と制度の関係は、実際の事例を見るとよく分かります。公的機関の公表事例を制度ごとに紹介します。
公的機関が紹介している4制度の活用事例(出典:中小企業基盤整備機構『省力化投資補助金(一般型)活用事例集』『100億企業成長ポータル』、中小企業庁『ミラサポplus』、近畿経済産業局『施策説明会資料』を基に当社作成)省力化投資補助金(一般型): 人手のかかる工程を設備に任せる
従業員48人の機械部品製造業では、手動の測定機による検査に1日40時間かかっていました。補助金でCNC三次元測定機と検査成績書の自動作成ソフトを導入し、1回80分の検査が15分になりました。検査の作業者は5人から2人になり、浮いた時間を付加価値の高い工程や若手の育成に回しています(出典:中小企業基盤整備機構『中小企業省力化投資補助金(一般型)活用事例集』2026年5月)。
小さな会社でも活用されています。従業員9人の家具製造業は、熟練者の手作業だった革の裁断に、自動裁断機とCADを導入しました。裁断は1枚60分から15分になり、月30時間あった残業は3時間に減りました。裁断の担当者を縫製に回し、新たな雇用と増産の体制も整えています(同事例集)。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金: 新しい製品と稼ぎ方をつくる
紫蘇の生産から加工品の販売・輸出までを手がける農業関連企業は、旧ものづくり補助金で、ICTによる圃場管理と収穫後の自動選別システムを導入しました。作業負担は86%減り、作業効率は6.7倍になったと紹介されています。
同じ記事では、注文を受けて作る「請負型」から、自社製品を開発・製造する「提案型」へ転換するため、生産設備を導入した金属部品メーカーも紹介されています(出典:中小企業庁『事例から学ぶ「ものづくり補助金」』ミラサポplus、2026年3月最終更新。いずれも過年度の採択事例)。
新製品や新市場への投資を支える役割は、2026年度に統合された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が引き継いでいます。
成長加速化補助金: 売上高100億円をめざす投資
売上高37億円の自動車筐体部品メーカーは、2031年に売上高100億円という目標を掲げています。電動車向けの部品の大型化に対応するため、大型ダイカストラインやAIによる外観検査の導入を進め、成長加速化補助金にも採択されました。AIの検査は立ち上げから1年、不良の報告は1件もないそうです(出典:中小企業基盤整備機構『100億企業成長ポータル 宣言企業インタビュー』2026年1月)。
大規模成長投資補助金: 拠点の新設・増設で事業を大きくする
従業員348人の除湿機メーカーは、主力事業を強化するため、コア部品の生産設備を増設する計画で採択されました。事業完了後の3年間で約17.5%の賃上げを計画しています(出典:近畿経済産業局『令和7年度当初予算・令和6年度補正予算関連 施策説明会資料』2025年3月。1・2次公募の採択企業例)。
同じ資料によると、1・2次公募で採択された194者の投資後3年間の平均賃上げ率は15.8%です。大きな投資で事業を伸ばし、その成果を賃上げにつなげる制度だといえます。
当社がご支援した例: 下請けの印刷会社がパッケージ印刷へ
代表がYouTubeで紹介した、当社がご支援したお客様の例です。教科書や参考書の印刷を下請けで手がけてきた少人数の印刷会社が、旧事業再構築補助金を活用してパッケージ印刷に進出しました。新しい印刷機と、それを搬入するための建物工事で補助金約5,600万円が採択され、入金まで完了しています。
パッケージ印刷ができるようになったことで、これまでのお得意先からも、以前は受けられなかった仕事の注文が入るようになったそうです。
上限1,000万円以上の主要4制度の比較(2026年10月14日確認)
補助上限額・補助率・対象企業を比べると、次のとおりです。
上限1,000万円以上の主要4制度の比較(出典:中小企業基盤整備機構・各補助金事務局の公募要領を基に当社作成)申請の条件になる主な要件は、次の表のとおりです。
| 制度(公募回) | 投資額などの下限 | 主な賃上げ要件 | 100億宣言 |
|---|
| 省力化一般型(第8回) | 単価50万円(税抜)以上の機械装置等が1つ以上 | 1人当たり給与支給総額 年平均3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上 | 不要 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス(第1回) | 補助額100万円以上(新事業進出枠・グローバル枠は750万円以上) | 1人当たり給与支給総額 年平均3.5%以上、事業場内最低賃金+30円以上 | 不要 |
| 成長加速化(3次) | 投資額1億円以上(建物・機械装置・ソフトウェア、税抜) | 補助事業終了後3年間、1人当たり給与支給総額 年平均4.5%以上 | 必須 |
| 大規模成長投資(6次) | 投資額20億円以上(100億宣言企業は15億円以上) | 補助事業終了後3年間、1人当たり給与支給総額 年平均5.0%以上(宣言企業は4.5%以上) | 任意 |
出典:各制度の公募要領(省力化一般型 第8回、新事業進出・ものづくり商業サービス 第1回 1.3版、成長加速化 3次 Ver1.4、大規模成長投資 6次)
制度ごとのポイントは次のとおりです。
- 省力化一般型: 自社の現場に合わせた「オーダーメイド設備」が対象です。汎用の設備やソフトも、組み合わせて高い省力化効果を生むなら対象になります。公表された申請数と採択数から計算すると、第1回〜第6回の採択率は60.9%〜69.3%でした。計画の立て方は省力化投資補助金(一般型)の事業計画の立て方で解説しています
- 新事業進出・ものづくり商業サービス: 2026年度に、ものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金が統合された制度です。新製品・新サービスの開発、新市場への進出、海外展開を支援します。詳しくは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とはをご覧ください
- 成長加速化: 建物の建設・増築や、生産能力を高める機械装置・ソフトウェアへの投資が対象です。審査は書面と経営者のプレゼンの2段階で、2次公募では223件が採択されました
- 大規模成長投資: 拠点新設などの大規模投資が対象です。経営者によるプレゼン審査があり、5次公募の倍率は約2.6倍と公表されています
制度が決まったら「規模・資金・時期」を準備する
目的で制度を選んだら、次の3点を準備しておけば安心です。
規模: 上限額より目的との一致を優先する
規模が合う制度が複数あっても、補助額は大きく変わらないことが多いです。仮定の例として、従業員60人の会社が1億円(税抜)の設備投資をし、全額が補助対象経費になるとします。
| 制度 | 適用される上限額 | 補助率 | 補助額の目安 |
|---|
| 省力化一般型 | 5,000万円(51〜100人) | 1/2 | 5,000万円 |
| 新事業進出・ものづくり(新事業進出枠) | 5,500万円(51〜100人) | 1/2 | 5,000万円 |
| 成長加速化 | 5億円 | 1/2 | 5,000万円(売上高10億円以上と100億宣言が前提) |
この仮定では、どの制度でも補助額は同じです。だからこそ、投資の目的にいちばん合う制度を選ぶことが、採択への近道になります。
資金: 立て替えと賃上げを3年計画に織り込む
補助金は、事業が終わって実績報告をし、金額が確定してから支払われます。1億円(税抜)の設備なら、税込1億1,000万円をいったん自己資金と借入で用意します。採択前から金融機関に相談し、つなぎ融資を準備しておくと安心です(補助金は後払い。設備投資の資金繰りとつなぎ融資)。
賃上げの目標は、当社では3年の事業計画に落とし込みます。賃上げはベースアップに限らず、賞与も対象です。ベースアップに上乗せし、賞与でも還元し、最終年度にわずかに届かなければ決算賞与で還元する。この組み立てなら、無理なく達成をめざせます。詳しくは補助金の賃上げ要件と損益計画の立て方で解説しています。
時期: 導入したい時期から逆算する
どの制度も、交付決定のあとに発注・契約した経費が対象です。採択発表と交付申請を経てから発注するので、設備を入れたい時期から逆算して、申請する公募回を選びます。
準備には、GビズIDプライムの取得や、成長加速化なら100億宣言の公表(通常2〜3週間)も必要です。締切の1〜2か月前には動き始めると、余裕を持って計画を仕上げられます。
複数の制度を検討するときのポイント
一つの投資で複数の制度を検討することもできます。各制度の公募要領・FAQでは、次のように定められています。
- 省力化一般型と新事業進出・ものづくり商業サービス: 同時期に応募でき、複数採択されたら1つを選んで交付申請します。同じ経費で二つの国の補助金を受けることはできません
- 成長加速化と大規模成長投資: 同時に申請できます(大規模成長投資のFAQ)。成長加速化は、併願するとき事前に事務局へ相談します
- どの制度でも、申請中・受給済みの補助金は申請時に記載します
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、申請締切日から遡って16か月以内に、旧ものづくり補助金などで採択された事業者を対象外としています。本命の制度を先に決めておくと、準備がスムーズに進みます。
投資額が数百万円程度の場合
投資額が数百万円程度なら、次の制度も候補になります。
- 省力化投資補助金(カタログ注文型): カタログに登録された製品が対象。補助上限は従業員数に応じて200万〜1,000万円(賃上げ目標の達成時は300万〜1,500万円)で、随時受け付けています
- デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金): 登録されたITツールが対象。通常枠は補助額5万円以上450万円以下です
当社が最初に検討をおすすめする順番
目的に合う制度を選ぶのが前提ですが、当社では設備投資のご相談を受けたとき、次の順で検討することが多くあります。
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
代表はYouTubeで、新製品や新事業のための設備でも、工程の短縮や自動化といった省力化の要素を含むことが多いと解説しています。投資の主な目的を人手不足の解消と説明できるなら、省力化一般型から検討する価値があります。新しい市場で新しい製品を売ることが中心なら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が合います。
売上高が10億円を超え、100億円への成長計画がある企業は成長加速化を、15億〜20億円以上の投資を計画している企業は大規模成長投資を検討します。
最新の公募状況(2026年10月17日確認)
各事務局が公表している日程をまとめました。この節は公募回ごとに更新します。
4制度の公募日程(出典:各補助金事務局の公式サイト・公募要領を基に当社作成、2026年10月17日確認)- 省力化一般型: 第8回は10月16日17時で受付を終了しました。採択発表は2027年2月上旬の予定です。第9回は11月上旬に公募開始、12月上旬に申請受付開始、12月下旬に締切の予定で、採択発表日は後日公表されます
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金: 第1回は10月30日18時締切。採択発表は2027年1月の予定です
- 成長加速化: 3次公募は11月12日15時締切です。事務局は、3次に応募するなら100億宣言の申請を10月26日までに行うよう案内しています(100億企業成長ポータル)
- 大規模成長投資: 6次公募は締め切られ、プレゼン審査を経て11月上旬頃に採択発表の予定です
次の公募回の日程は、各事務局から公表され次第この節に反映します。
まとめ
- 設備投資の補助金は、上限額ではなく投資の目的から選ぶ。目的が合えば、上限の大きい制度も活用できる
- 省力化、新製品・新市場、売上高100億円への成長、拠点の新設と、制度ごとに公的な活用事例がある
- 規模が合う制度が複数あっても補助額は同じになりやすい。目的との一致を優先する
- 資金(立て替えと3年の賃上げ計画)と時期を準備しておけば、安心して進められる
- 併願するときは各公募要領の規定を確認し、本命の制度を決めておく
株式会社ウェルティイノベーションでは、公認会計士・税理士・行政書士の代表が、補助金の選定から入金まで伴走しています。投資の目的と規模に合う制度の選定、事業計画と申請書類の作成支援、3年の賃上げを織り込んだ損益計画、資金繰りと金融機関との調整、交付申請や実績報告までが対象です。着手金は無料の完全成功報酬で、入金までの手続きはすべて報酬に含まれます。補助金の採択支援額は累計13億円超です。検討中の投資の内容、金額、時期をお知らせください。依頼先の選び方は補助金の依頼先の選び方でも解説しています。
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公式情報
- 中小企業省力化投資補助金 一般型 公募スケジュール(中小企業省力化投資補助金事務局) https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/schedule/
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募スケジュール(同補助金事務局) https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/schedule/
- 中小企業成長加速化補助金(100億企業成長ポータル) https://growth-100-oku.smrj.go.jp/