見積を取り、設備の導入時期も見えてきた。でも「補助金は後払い」と聞いて、手が止まっていませんか。補助金のつなぎ融資を申請前に段取りしておけば、入金を待たずに設備投資を進められます。
金融機関に早めに相談すれば、つなぎと長期資金をまとめて組み立てられます。日本政策金融公庫には、補助金の交付決定を受けた会社向けの融資制度もあります。後払いだからと投資をあきらめる必要はありません。
この記事では、省力化投資補助金(一般型)第8回と、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回の公募要領を基に、お金の流れ、つなぎ融資の組み方、相談の順番、実際に補助金と融資で設備を入れた会社の事例を紹介します。制度情報は2026年10月14日に公式サイトで確認しています。
補助金は後払い。入金までをつなぎ融資で支える
補助金は、使ったお金の一部が後から戻ってくる仕組みです。省力化投資補助金(一般型)の公募要領は、支払いを「補助金額の確定後の精算払」としています。この入金までの期間を支えるのが、つなぎ融資です。
補助金は後払い:入金までをつなぎ融資で支える(出典:中小企業基盤整備機構『中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回)』『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版』を基に当社作成)中小機構のJ-Net21も、受け取りまでの期間が長いため、実務では金融機関からつなぎの資金を借りて対応することが多いと説明しています(出典:J-Net21「補助金・助成金の活用」)。つなぎ融資は特別な手段ではなく、補助金を使った設備投資の標準的な進め方なんです。
スケジュールと支払いのルール
2つの補助金の主な期限は次のとおりです。
| 項目 | 省力化投資補助金(一般型)第8回 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回 |
|---|
| 交付申請 | 原則、採択発表日から2か月後の日まで | 原則、採択発表日から遅くとも2か月後の日まで |
| 補助事業実施期間 | 交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内) | 新事業進出枠・グローバル枠は交付決定日から14か月以内、革新的新製品・サービス枠は10か月以内 |
| 実績報告 | 事業完了から30日を経過した日か、事業完了期限日のいずれか早い日まで | 同左 |
| 入金 | 実績報告、補助金額の確定の後(精算払) | 確定検査(交付額の確定)、補助金の請求の後 |
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回)」(2026年8月、9月18日改訂)、同「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版」(2026年9月)。
資金計画を立てるうえで押さえたいルールは2つです。
- 発注は交付決定の後。交付決定に合わせて融資を実行できるよう、先に段取りしておきます
- 支払いは銀行振込で、実施期間内に終えます(手形払いなどは対象外)
確定検査から入金までの日数は、公募要領に定めがありません。つなぎ融資の返済期日は、入金予定に数か月の余裕を持たせて組んでおくと安心です。
つなぎ融資は申請前に段取りする
資金を3つに分けて組む
必要なお金は、返し方ごとに3つに分けると組み立てやすくなります。
| 区分 | 金額の目安 | 主な調達方法 |
|---|
| 補助金が入るまでのつなぎ | 補助金の見込額 | 短期の借入(補助金の入金で返済) |
| 補助金で埋まらない自己負担分 | 投資額から補助金を引いた額 | 自己資金、長期の設備資金の借入 |
| 消費税分と既存事業の運転資金 | 消費税分、平常の運転資金 | 自己資金、運転資金の借入 |
つなぎの部分は、補助金が入れば返せます。自己負担分は、設備が生む利益で返していくお金なので、設備の効果が出る期間に合わせた長期の返済で組むのが基本です。投資回収の考え方は省力化投資補助金(一般型)の事業計画の立て方で解説しています。
相談する順番
ポイントは、採択の後ではなく申請の前に金融機関へ相談することです。
つなぎ融資を相談する順番(出典:中小企業基盤整備機構『中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回)』、日本政策金融公庫『省力化支援資金』『企業活力強化資金』を基に当社作成)代表はYouTubeで、この進め方を具体的に解説しています。申請の前に金融機関の担当者へ投資の中身を伝え、補助金が入るまでのつなぎ融資をお願いしておく。返済期間や金利の目安まで話を進めておけば、計画書に「この金融機関とこの条件で話を進めている」と書けて、資金の裏付けとして伝わる、という考え方です。
日本政策金融公庫に27年勤めた方を迎えた対談の回でも、計画を事前に金融機関へ伝え、コミュニケーションを取っていた会社は問題なく進んでいる、という話が出ています。
メインバンクを先にするのは、普段の取引や決算書を把握しているからです。つなぎと長期資金をまとめて相談でき、信用保証協会の保証付き融資や、自治体の制度融資を含めた提案を受けられることもあります。
確認書があれば、資金の裏付けも示せる
両補助金とも、金融機関から資金を借りる場合は、金融機関に事業計画を確認してもらい、確認書を申請時に出します。複数の金融機関から借りる場合も1者分で足ります。省力化投資補助金(一般型)では、金融機関が事業場の所在地域の外にあってもかまいません。
早めに相談しておけば、この確認書も余裕を持って受け取れます。相談の際は、次の資料をそろえておくと話が早く進みます。
- 事業計画の案(何に投資し、どれだけ利益が増えるか)
- 設備の見積書と、補助金の見込額
- 月ごとの資金繰り表(つなぎ・長期資金・自己資金の内訳)
- 直近の決算書と、今期の試算表
日本政策金融公庫の制度を使えば後払いでも進められる
日本政策金融公庫には、省力化投資補助金の交付決定を受けた会社が使える融資制度が2つあります(2026年10月14日確認)。
| 項目 | 省力化支援資金(中小企業事業) | 企業活力強化資金(国民生活事業) |
|---|
| 利用できる方 | 中小企業省力化投資補助事業、または大規模成長投資補助金の交付決定を受けた方 | 中小企業省力化投資補助金の交付決定を受けている方 |
| 資金の使いみち | 省力化に必要な設備資金・長期運転資金 | 省力化に必要な設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 直接貸付 14億4千万円 | 7,200万円 |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内(うち据置2年以内) | 20年以内(うち据置2年以内) |
| 利率 | 5億4千万円まで基準利率から0.65%引き下げ | 特別利率B |
出典:日本政策金融公庫「省力化支援資金」「企業活力強化資金」(公式ページ、2026年10月14日確認)。
設備資金を最長20年で返せるため、自己負担分の長期資金としても組み立てやすい制度です。融資の可否と条件は審査で決まります。交付決定が前提なので、申請前に支店へ相談し、民間金融機関との役割分担を決めておきます。
地域によっては、補助金の交付決定を受けた会社向けに、入金までのつなぎ資金を扱う制度融資もあります。取引金融機関や自治体の商工担当窓口で確かめてみてください。まとまった資金を用意しにくい場合は、リース会社との共同申請も選択肢です。
補助金と融資で設備投資を実現した事例
公的機関が公表している事例から、補助金を使って設備を入れた会社を4つ紹介します(出典:中小企業基盤整備機構「補助金活用ナビ 補助金の活用事例」)。
補助金と融資で設備投資を進めた会社の例(出典:中小企業基盤整備機構『補助金活用ナビ 補助金の活用事例』を基に当社作成)信用金庫のつなぎ融資で新しい酒造りへ
栃木県の酒販店(グループ従業員3名)は、事業承継で酒蔵を引き継ぎ、注文に応じたオーダーメイドの酒造りに乗り出しました。ものづくり補助金で小型の精米機などを導入しています。
地元の信用金庫は、設備のつなぎ融資にとどまらず、会社の財務状況を見て全体の返済計画も見直しました。その後、大手企業からオーダーメイド酒の製造を受注し、ほかの店からも引き合いが来ています(出典:補助金活用ナビの事例(酒販店))。
メインバンクの融資でDM事業を育てる
茨城県の印刷業(従業員43名)は、下請け中心の印刷から販促支援への転換を進めるなかで、ものづくり補助金でDM関連の設備を導入しました。採択された設備には、メインバンクの信用金庫が融資で支援しています。
DMの受注が増え、2019年7月からの期は途中まで月平均15%の売上拡大を達成しました。社長は補助金を「踏み出す背中を押してくれる制度」と話しています(出典:補助金活用ナビの事例(印刷業))。
省力化投資補助金(一般型)で作業時間を大きく短縮
宮崎県の鮮魚の加工・卸(従業員8名)は、手作業の加工が受注量の上限になっていました。省力化投資補助金(一般型)でウロコ取り機などを導入し、鯛200枚のウロコ取りが6人がかりで計300分から12分になりました。地元のホテルやレストランの大口ニーズにも応えられるようになっています(出典:補助金活用ナビの事例(鮮魚の加工・卸))。
北海道の機械メーカー(従業員18名)は、大判の鋼板を折り曲げられず、受注を見送ることがありました。同じく一般型で大型の折り曲げ機を導入し、4人が必要だった作業を2人でこなせるようになり、加工時間も約7割減っています(出典:補助金活用ナビの事例(機械メーカー))。
効果の大きい設備ほど、早く動かすほど得られる成果も大きくなります。つなぎ融資を先に段取りしておくことが、補助金を使った投資を前に進める近道です。
資金繰り表で確かめる(仮定の例)
ここからは仮定の数字です。実在の企業や採択事例ではありません。
- 税抜3,000万円(税込3,300万円)の設備を導入し、補助率1/2で補助金は1,500万円
- 発注時に着手金990万円、6か月目の検収時に残金2,310万円を支払う
- 長期借入1,000万円、つなぎ融資1,500万円、残りは自己資金
- 補助金の入金は12か月目
支払った設備代を、何で支えているか(出典:当社作成。数値は説明用の仮定)6か月目から12か月目までは、借入2,500万円と自己資金800万円で3,300万円を支えます。補助金が入ればつなぎ融資を返し、消費税の控除を受けた後に残るのは、長期借入1,000万円と自己資金500万円です。3,000万円の設備を、自己資金500万円で導入できる形になります。
資金計画に入れておく3つのこと
- 消費税は補助対象外です。支払いは税込で用意し、原則課税なら決算後の申告で控除を受けます
- 補助金は受け取った年度の収入として課税されます。圧縮記帳を使えるかを、顧問税理士と事前に確認しておくと安心です
- つなぎ融資の利息と、設備にかける保険・共済の保険料は自社の負担です
賃上げで増える人件費も、同じ資金繰り表に入れておきます。詳しくは補助金の賃上げ要件を損益計画で確かめるをご覧ください。制度ごとの補助上限額は補助上限1,000万円以上の補助金の選び方で比較しています。
まとめ
- 補助金は後払いでも、つなぎ融資で入金までを支えれば設備投資を進められる
- 資金を「つなぎ」「自己負担分」「消費税と運転資金」に分け、つなぎは短期、自己負担分は長期で組む
- 申請前にメインバンクへ相談し、返済期間・金利の目安まで詰めておくと、確認書と計画書の裏付けにもなる
- 日本政策金融公庫には、省力化投資補助金の交付決定を受けた会社向けの融資制度がある
- 信用金庫のつなぎ融資や融資を受けて、補助金で設備を入れ、受注や生産性を伸ばした会社の事例が公表されている
株式会社ウェルティイノベーションでは、公認会計士が、補助金を使った設備投資の資金繰り表づくり、つなぎ融資と長期資金の組み合わせ、金融機関に説明する事業計画の作成支援、採択後の交付申請から実績報告までをご相談いただけます(補助金の採択支援額 累計13億円超)。着手金は無料の完全成功報酬で、補助金の入金までの手続きに追加料金はかかりません。検討中の設備と投資額、導入希望時期、取引のある金融機関をお知らせください。
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