新しい製品をつくりたい、新しいお客様に売りたい、海外に届けたい。そんな投資を考えて「ものづくり補助金」を調べたら、名前が変わっていて戸惑っていませんか。2026年度から、ものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金は統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金として公募されています。
新製品・新サービスの開発、新しい顧客層への進出、輸出に向けた投資を後押しする補助金で、補助上限は最大9,000万円です。
本記事では、3つの枠の使い道を旧制度の公的な事例で紹介し、事業計画の組み立て方と第1回の締切を整理します。内容は第1回公募要領(1.3版)と事務局サイトで2026年10月14日に確認しました。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは(ものづくり補助金は統合済み)
実施するのは中小企業基盤整備機構(中小機構)です。新製品や新市場への進出で付加価値を伸ばし、賃上げにつなげることを目的にしています。旧制度は新規の受付を終え、公募回は第1回から数え直しです。
3つの枠の補助上限・補助率・実施期間(出典:中小企業基盤整備機構『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)』1.3版を基に当社作成)補助上限は、枠と従業員数で決まります。括弧内は賃上げ特例を使った場合です。
| 従業員数 | 革新的新製品・サービス枠 | 従業員数 | 新事業進出枠・グローバル枠 |
|---|
| 1〜5人 | 750万円(850万円) | 1〜20人 | 2,500万円(3,000万円) |
| 6〜20人 | 1,000万円(1,250万円) | 21〜50人 | 4,000万円(5,000万円) |
| 21〜50人 | 1,500万円(2,500万円) | 51〜100人 | 5,500万円(7,000万円) |
| 51人以上 | 2,500万円(3,500万円) | 101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
出典:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.3版
第1回公募の締切は2026年10月30日18時
第1回公募のスケジュール(出典:中小企業基盤整備機構『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募スケジュール』2026年10月14日確認を基に当社作成)事務局の公募スケジュールでは、申請受付は9月30日に始まり、締切は10月30日(金)18時です。採択発表は2027年1月の予定です。第2回の日程は、10月14日時点で公表されていません。
次の2つは時間がかかるので、先に進めておくと安心です。
- GビズIDプライムの取得(1週間程度)
- 一般事業主行動計画を作り、「両立支援のひろば」で公表する(1〜2週間程度。従業員数にかかわらず必要)
3つの枠はこんな取り組みに使えます(公的な事例つき)
旧制度の事例で見る3つの枠の活用イメージ(出典:全国中小企業団体中央会『令和7年度ものづくり補助金成果事例集』、中小企業基盤整備機構『補助金活用ナビ』を基に当社作成)ここからは枠ごとに、対象になる取り組みと旧制度の事例を紹介します。事例はいずれも統合前の制度のもので、どの枠に近いかは当社の見立てです。
革新的新製品・サービス枠:自社の技術で新しい価値をつくる
自社の技術力を生かし、顧客に新しい価値を届ける新製品・新サービスの開発が対象です。設備の導入とあわせて、開発に取り組むことがポイントです。
従業員144人の和菓子メーカーは、コロナ禍でお土産需要が落ち込み、全国で日常的に食べてもらえる商品を求めていました。大学の講座の指導を受け、糖尿病の方も食べやすい低糖質・低カロリーの新製品を開発しています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(令和元年度補正・2年度補正)で専用の金型や包装機、検査機器を導入し、量販店が求める賞味期限30日を実現しました。売上高は58.3%、付加価値額は64.8%、給与支給総額は43.5%伸び、従業員は163人に増えています(出典:全国中小企業団体中央会『令和7年度ものづくり補助金成果事例集』2026年3月)。
新事業進出枠:新しい顧客層へ事業を広げる
自社にとって新しい製品等で、これまで対象にしていなかった顧客層の市場に進出する事業が対象です。日本初である必要はありません。審査では、まだ普及していない分野か(新市場性)、相場より高い付加価値を目指すか(高付加価値性)のどちらかを示します。
北海道で農業施設を手がける建設会社は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(令和元年度補正・2年度補正)でワイナリーを新設しました。約2,500万円で醸造設備を入れ、生産は約3,000本から約8,000本に、ワインの売上は約300万円から1,500万円規模に伸びています(出典:同事例集)。
代表がYouTubeで紹介した相談例では、人材紹介会社が、紹介する人材を育てるeラーニングを開発したいと考えていました。顧客が同じ企業のままでは既存事業の付加価値づくりですが、求職者から受講料をいただく事業に組み立て直せば、顧客層が個人に変わり新しい市場への進出として説明できます。代表は、既存事業の強みを生かせる「近からず遠からず」の事業を考えることが大事だと解説しています。
グローバル枠:海外の新しい市場へ届ける
自社製品で、これまで販売していなかった国・地域の市場を自ら開拓するための、国内の製造拠点などの強化が対象です。海外旅費や通訳・翻訳費も補助対象になります。
従業員17人の製氷会社は、米国の飲食店向けに氷の輸出を始める際、当時のものづくり補助金で自動計量器を導入しました。米国向けの大きなサイズに合わせて袋詰めまで自動化し、5人の工程を3人で回せるようになっています。
空いた人手を付加価値の高い氷の成形に回し、生産量は2.5倍に。米国向けの売上は2期続けて300%増え、国内の業務用需要が落ち込んだ翌年も前期比10%の増収を達成しました(出典:中小機構『補助金活用ナビ』活用事例 2023年1月)。
採択に近づく事業計画の組み立て方
事業計画の組み立て方(出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金事務局『経営戦略に基づく補助事業計画の考え方(第1回)』1.0版を基に当社作成)事務局は9月30日、『経営戦略に基づく補助事業計画の考え方』を公開しました。現状を振り返り、目指す姿との差から課題を選び、経営戦略を決めてから補助事業に落とし込む順番です。
中小企業庁の担当者も、ビジョンから戦略、補助事業、将来の成長までの一貫性を重視し、補助金を戦略実現の手段と位置づけるよう求めています(出典:ミラサポplus「中小企業庁担当者に聞く 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」2026年9月)。
事例:取引先の「困りごと」から需要を確かめる
従業員20人の光学レンズメーカーは、取引先から「金型の補修を頼める業者が少なく、順番待ちで困っている」と聞きました。そこで県内で補修を必要とする事業者の数や、請け負う業者の数を事前に調べています。
商工会議所の助言も受けて計画をまとめ、事業再構築補助金(令和2年度補正・第1回)に採択。レーザー加工機を導入して金型補修事業に乗り出しました(出典:中小機構『補助金活用ナビ』活用事例 2025年12月)。
計画に書き込む4つの視点
代表はYouTubeで、次の4点を重視すべきだと解説しています。
- 市場が伸びているか(需要の根拠)
- 本当に利益が出るか(収益計画)
- 既存事業と並行して回せる体制か
- 補助金を使って取り組む必要性を説明できるか
投資額にも余裕を持たせます。新事業進出枠とグローバル枠の補助下限は750万円で、補助率1/2なら補助対象経費1,500万円以上が目安です。代表は旧・中小企業新事業進出補助金のお客様に、交付申請で一部の経費が外れても下限を保てるよう、1,700万円程度での申請を勧めていました。
基本要件は3年計画で無理なく組み立てる
補助事業の終了後3〜5年の事業計画で、次の要件を満たします。当社では3年の計画で作成しています。
- 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率4.0%以上
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(目標は交付申請までに従業員へ表明)
- 事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より毎年30円以上高くする
- 一般事業主行動計画の策定・公表
- 金融機関から借り入れる場合は、その金融機関の確認書
3年計画なら、1人当たり給与支給総額は3年で約10.9%の増加が目安です。起点は、補助事業が終わる時点を含む事業年度です。
給与支給総額には賞与も含まれます。当社では、ベースアップを続けながら賞与で上乗せし、最終年度にわずかに届かない分は決算賞与で従業員に還元する組み立てをおすすめしています。業績の伸びを従業員に報いる形にもなります。
給与の目標に届かないと、未達の割合に応じて補助金の一部を返す定めがあります。達成できる目標を最初に置き、毎年の決算で進み具合を確かめておけば安心です(詳しくは補助金の賃上げ要件を損益計画で確かめる)。
もともと大幅な賃上げを予定している会社は、賃上げ特例(給与支給総額の年平均成長率6.0%以上など)で補助上限を引き上げられます。
使える経費と申請前の準備
| 経費 | 使える枠 | ポイント |
|---|
| 機械装置・システム構築費 | 全枠(必須) | 単価10万円(税抜)以上の設備・システム |
| 建物費 | 新事業進出枠・グローバル枠 | 補助事業に使う建物の建設・改修 |
| 技術導入費・外注費・専門家経費 | 全枠 | 新製品の開発や立ち上げに必要なもの |
| 広告宣伝・販売促進費 | 全枠 | 新製品・新サービスの販路開拓 |
| 海外旅費・通訳翻訳費 | グローバル枠 | 海外市場の開拓 |
出典:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.3版
申請前に、次のものをそろえておくと計画づくりが進みます。
- 直近の決算書と労働者名簿
- 需要の根拠(取引先の声、商圏の事業者数、市場の統計など)
- 付加価値額と給与の3年計画
- 設備・工事の見積もり(発注先1件50万円以上は3者以上)
- 借り入れる場合は、金融機関の確認書
補助金は後払いで、発注・契約は交付決定の後です。設備代の資金繰りは早めに金融機関と相談しておくと安心です(補助金の資金繰りとつなぎ融資)。締切日から16か月以内に旧制度や本補助金で採択された会社などは申請できないため、採択歴がある場合は公募要領で確かめてください。
省力化投資補助金(一般型)とあわせて検討する
設備投資の補助金を探しているなら、当社はまず省力化投資補助金(一般型)を検討することをおすすめしています。既存工程の自動化・省力化なら、こちらが合います。新製品のための設備でも省力化の要素があれば、両方を比べて投資の目的から申請先を決めます。一般型の計画づくりは省力化投資補助金(一般型)の事業計画の立て方、主要制度の比較は補助上限1,000万円以上の補助金の選び方をご覧ください。
まとめ
- ものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金は統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になった
- 新製品の開発、新しい顧客層への進出、輸出の3枠。旧制度でも、新製品で売上を伸ばした和菓子メーカーや、ワイナリーを新設した建設会社、米国へ輸出を広げた製氷会社などの事例がある
- 事業計画は「目指す姿→経営戦略→補助事業」の順に組み、取引先の声や市場データで需要を裏付ける
- 賃上げ要件は3年計画で、ベースアップと賞与を組み合わせて達成できる目標を置く
- 第1回の締切は2026年10月30日18時。第2回は10月14日時点で未公表
株式会社ウェルティイノベーションでは、公認会計士・税理士・行政書士の代表が経営革新等支援機関として、制度・枠の選定から事業計画書の作成支援、3年の損益計画、資金繰り、交付申請・実績報告など入金までの手続きまでご支援しています。着手金無料の完全成功報酬で、入金までの手続きもすべて報酬に含みます。補助金の採択支援額は累計13億円超です。検討中の事業の内容、投資額、従業員数、実施時期をお知らせください。
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公式情報
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版(中小企業基盤整備機構) https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/assets/documents/shinmono_application_guidelines_01.pdf
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募スケジュール(中小企業基盤整備機構) https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/schedule
- 経営戦略に基づく補助事業計画の考え方(第1回)(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金事務局) https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/assets/documents/shinmono_biz_strategy_driven_subsidy_planning_01.pdf