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省力化投資補助金(一般型)の事業計画の立て方|採択事例に学ぶ5ステップ

見積を取り、申請書を開いたところで手が止まっていませんか。省力化投資補助金(一般型)の事業計画では、「省力化指数」「投資回収期間」の欄で多くの経営者が考え込みます。

コツは、設備より先に数字を決めることです。業務の時間を測り、減る時間と浮いた人手の行き先を決めれば、設備の仕様と金額は自然に決まります。

この記事では、第8回公募要領(2026年8月公表、9月18日改訂)と、公式に公表された採択事例を基に、事業計画を組み立てる5つのステップを解説します。第8回の受付は2026年10月16日17時で締め切られました。事務局は第9回公募を11月上旬に開始する予定で、申請受付は12月上旬に始まり、締切は12月下旬の予定です。第9回の公募要領は2026年10月17日時点で未公表です。本記事は第8回公募要領を基にしていますが、ここで解説する5つのステップは、そのまま次回の準備に使えます。

省力化投資補助金 一般型の事業計画は「設備より先に数字」

一般型の事業計画は、次の図の順番で組み立てます。設備の候補は早めに集めてかまいません。仕様と金額を確定させるのは最後です。

事業計画を組み立てる5つのステップの流れ図。業務の時間を測る、省力化指数を見積もる、浮いた人手の行き先を決める、損益計画に付加価値額と賃上げを入れる、投資回収期間と資金繰りで設備を確定する
事業計画を組み立てる順番(出典:当社作成。用語は中小企業基盤整備機構『公募要領(第8回公募)』に準拠)

投資額は、自己資金と融資で無理なく賄える範囲で決めます。補助金は後払いなので、本業の利益と資金繰りに合った規模にしておくと、採択後の手続きも落ち着いて進められます。

制度の骨格を確認する(第8回公募要領)

補助上限は従業員数で決まります。カッコ内は大幅賃上げ特例を使った場合の上限です。

従業員数補助上限額大幅賃上げ特例の適用時
5人以下750万円1,000万円
6〜20人1,500万円2,000万円
21〜50人3,000万円4,000万円
51〜100人5,000万円6,500万円
101人以上8,000万円1億円

出典:中小企業基盤整備機構『中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)』

補助率は中小企業が1/2、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3です。最低賃金引き上げ特例を満たす中小企業も2/3になります。

事業計画(制度上は3〜5年)では、次の基本要件を満たす目標を置きます。

  • 労働生産性の年平均成長率4.0%以上
  • 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上
  • 事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上
  • 従業員21名以上は、一般事業主行動計画の公表

付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」、労働生産性は「付加価値額÷労働者数(従業員+役員)」です。

対象は、自社の業務に合わせた「オーダーメイド設備」です。汎用設備でも、自社向けに改良したり、複数を組み合わせたりする場合は対象になり得ます。

書面審査の「技術面」では、次の4点が見られます。どれも数字の大きさに加えて、算出根拠が妥当かが問われます。

  • 省力化指数が高いか
  • 投資回収期間が短いか
  • 付加価値額の年平均成長率が大きいか
  • 自社の業務に合わせたオーダーメイド設備か

「計画面」では、資金調達の見込みや賃上げ目標の実現性も見られます。第8回からは、設備の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価対象です。物価上昇率を上回る賃上げを計画しておくと、評価につながります。

採択事例に学ぶ、活用できる計画の共通点

中小機構は、採択結果の公表にあわせて「実際に採択された案件の概要」を業種別に紹介しています。業種はさまざまですが、うまく活用している計画には共通点があります。

業種取り組み数字の変化(見込み)生まれた人手・時間の行き先
卸売・小売業ピッキングカートとタブレットで紙伝票をなくす年間労働時間を約30%(約5,000時間)削減、ピッキングミス約2%→1%未満在庫管理の最適化、データを生かした販売
金属製品の加工製造業ロボットベンダーと専用の加工ロボット人手作業を6時間削減、生産量は最大200%工程管理
飲食サービス業製麺ラインを一貫して自動化製麺作業1日600分→150分、週2,000玉→6,000玉営業、新店舗の支援、新商品開発
倉庫業立体型仕分けロボットを自社向けに改良1日の出荷件数200件→600件ラッピングなど付加価値の高い業務
空調設備工事業AIネスティングソフトとレーザー切断機年約1,585時間を省力化、鋼材の有効利用率が約10%改善品質管理、後進育成、原価計算

出典:中小企業基盤整備機構『一般型公募(第2回)採択結果について』(2025年8月)、『同(第4回)』(2026年3月)、『同(第6回)』(2026年8月)の「実際に採択された案件の概要紹介」を基に当社作成

共通しているのは、次の3点です。

  • 導入前の業務を、時間・件数・人数で具体的に書いている
  • 減った時間を、増産や新事業、品質向上に回す道筋がある
  • その結果、売上や利益がどう伸びるかまでつながっている

資料は事務局が要約したもので、同様の計画なら採択されるという意味ではありません。事例は「書き方の型」として参考にし、数字は自社の実績から積み上げます。

事業計画を組み立てる5つのステップ

仮の数字として、従業員30人の金属加工業が、製品の外観検査に年3,000時間かけている想定で進めます(実在の企業ではありません)。

ステップ1:業務を書き出し、時間を測る

まず、業務の流れを工程ごとに書き出します。代表もYouTubeで、最初にやるべきは「業務の言語化と小口化」だと解説しています。仕事を細かく分けると、「ここは機械に任せられる」という工程が見えてくる、という考え方です。

工程が分かれたら、作業人数、1回の時間、月の回数を記録します。表の卸売・小売業の事例では、「1日400件の受注に対して作業時間50時間、移動距離230km」と現状を数字で示し、年約5,000時間の削減計画につなげていました(出典:中小企業基盤整備機構『一般型公募(第2回)採択結果について』)。現状を数字で書けると、効果も数字で書けます。

ステップ2:省力化指数を見積もる

省力化指数と投資回収期間は、公募要領で計算式が決まっています。

省力化指数と投資回収期間の計算式と計算例。省力化指数は約0.67、投資回収期間は4.0年
省力化指数と投資回収期間の計算式(出典:中小企業基盤整備機構『公募要領(第8回公募)』1-2. 定義を基に当社作成。数値は説明用の仮定)

画像検査システムで、検査が年1,000時間(判定の確認や段取りを含む)に減るなら、指数は約0.67です。導入後に残る時間も正直に見積もると、根拠に説得力が出ます。

表の製麺の事例は、製麺作業を1日600分から150分に減らし、常時3名の体制を1名の監視に移す計画でした(出典:中小企業基盤整備機構『一般型公募(第6回)採択結果について』)。式に当てはめると、省力化指数0.75に当たります。

ステップ3:浮いた人手の行き先を決める

審査では、省力化で生まれた時間を付加価値の高い業務に回し、賃上げにつなげる計画かが見られます。目的は人を減らすことではなく、同じ人数でより多くの価値を生むことです。

倉庫業の事例では、仕分けと検品の自動化で1日の出荷件数を200件から600件に増やし、生まれた人員をラッピングやメッセージカードなどの業務に回す計画でした(出典:中小企業基盤整備機構『一般型公募(第4回)採択結果について』)。第6回の資料では、身の回り品の卸売業が荷下ろしロボットで作業員を5名から2名にし、3名を新設する物流基地の事業に配置する計画も紹介されています。

ステップ4:損益計画に付加価値額と賃上げを入れる

当社では、事業計画を3年で作成しています。年度ごとに売上、原価、人件費、減価償却費、営業利益を置き、付加価値額と1人当たり給与支給総額を計算します。基準年度は「補助事業が完了した日を含む事業年度」で、申請時点の決算ではありません。

ここで効くのが、ステップ3で決めた「人手の行き先」です。金属製品の加工製造業の事例は、曲げ工程の自動化で生産量を最大200%に広げ、夜間の無人稼働も見込む計画でした(出典:中小企業基盤整備機構『一般型公募(第4回)採択結果について』)。増産で売上と付加価値額が伸びるので、賃上げの原資も計画の中で説明できます。

例えば1人当たり給与支給総額が480万円なら、年平均3.5%で3年間上げると最終年度は約532万円です。この人件費を払っても営業利益が伸びる売上計画にできれば、計画の実現性を説明しやすくなります。賃上げの組み立て方は、次の章で詳しく紹介します。

ステップ5:投資回収期間と資金繰りで設備を確定する

図の例では、投資額4,000万円に対し、分母は人件費の削減600万円(1日8時間×250日×3,000円)と付加価値の増加400万円の合計1,000万円です。投資回収期間は4.0年になります。

分母には、人件費の削減だけでなく付加価値の増加も入れられます。空調設備工事業の事例では、年約1,585時間の省力化に加えて、鋼材の有効利用率が約10%改善し、材料のロスも減る計画でした(出典:中小企業基盤整備機構『一般型公募(第6回)採択結果について』)。こうした効果も拾うと、回収期間をより実態に近く示せます。

代表は動画で、一から作り込む必要があるかは費用対効果で考えるべきだと解説しています。回収年数と資金の手当てが成り立つことを確かめて、設備の仕様と金額を確定させます。

賃上げはベースアップだけでなくてよい

賃上げ目標と聞くと、毎年3.5%のベースアップを思い浮かべる方が多いと思います。実は、そうとは限りません。

公募要領では、1人当たり給与支給総額に含める給与等として、給料、賃金、各種手当に加えて賞与も挙げています。給与所得として課税されるものが対象です(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も同様です)。しかも目標は「年平均」なので、毎年同じ幅で上げる必要もありません。

賃上げの組み立て方の図。ベースアップを続ける、賞与で積み上げる、最終年度は決算賞与で還元する、の3段階と、1人当たり給与支給総額480万円から3年目532万円までの計算例
賃上げの組み立て方(出典:中小企業基盤整備機構『公募要領(第8回公募)』の1人当たり給与支給総額の定義を基に当社作成。数値は説明用の仮定)

実務では、次の順番で考えると無理がありません。

  1. ベースアップは続ける。業績に余裕のある年は、少し上乗せする
  2. 業績に応じて賞与を増やし、年間の給与支給総額を積み上げる
  3. 最終年度に目標へあと少し届かない分は、決算賞与で従業員に支給する

代表もYouTubeで、このご時世なら補助金と関係なく2〜2.5%程度の昇給は必要なので、それは続けたうえで、残り1%程度を3年目に決算賞与でまとめて支給する方法を紹介しています(関連動画)。図の例も同じ考え方で、年2.5%の昇給と賞与に、最終年度の決算賞与15万円を加えて年平均3.5%に届かせています。

決算賞与は、業績が伸びた年に従業員の頑張りへ報いる方法でもあります。代表の動画でも「補助金を返すくらいなら、従業員に還元したほうがいい」と話す社長が多いと紹介されています。要件を満たせば会社の損金にもなり、毎月の固定費を上げすぎずに済みます。

万一目標に届かなかった場合も、返還は全額ではなく達成率に応じた割合です。例えば目標4%に対して実績3%なら、補助金の25%です。付加価値額が増えず赤字が続いた場合や天災など、事業者の責めに帰さない理由があれば返還は求められません。ベースアップと賞与を組み合わせて計画しておけば、落ち着いて達成を目指せます。

なお、算定の対象になるのは、その事業年度に全月分の給与を受けた従業員です。役員報酬や福利厚生費、法定福利費、退職金は含みません。賞与の支給時期と事業年度の関係は、顧問税理士と確認しておくと安心です。

補助金が入るまでの流れと資金の準備

補助金は、実績報告のあとに額が確定してから支払われる「精算払い」です。設備代はいったん自社で支払います。

応募申請から交付申請、発注・支払い、実績報告、補助金の入金、効果報告までの時系列
補助金が入るまでの流れ(出典:中小企業基盤整備機構『公募要領(第8回公募)』、同事務局公式サイト「申請の流れ」を基に当社作成)

第8回では、締切の10月16日から採択発表(2027年2月上旬の予定)まで約4か月です。第9回の採択発表日は、事務局から後日公表される予定です。代表は動画で、投資の実行まで半年から1年ほど見込んでおくとよいと説明しています。

先の例(投資額4,000万円・税抜、補助率1/2)なら、補助金の見込みは2,000万円です。消費税は対象外なので、支払いは税込4,400万円になります。発注は交付決定の後に行います。

融資は、補助金の採択とは別に金融機関が審査します。代表も動画で、採択と融資は別の話だと解説しています。借入を予定しているなら、計画の段階から金融機関に相談し、公募要領が求める金融機関の確認書もあわせて準備しておくとスムーズです。

あわせて次の点も資金計画に入れておきます。

  • 補助金は受け取った年度の収入として課税対象(圧縮記帳を使える場合があるため、顧問税理士に事前に相談)
  • 導入設備は計画期間終了まで、自然災害を含む保険・共済への加入が原則必要
  • システム構築費を計上するなら、計画期間中の保守契約が必要(費用は対象外)

申請前に準備しておくこと

時間がかかるものから着手します。

  • GビズIDプライムアカウント(取得に一定の期間がかかる)
  • 一般事業主行動計画の公表(従業員21名以上。公表申請は2週間以上の余裕を)
  • 直近2期分の決算書と納税証明書
  • 仕様と積算根拠が分かる見積書(採択後は原則、相見積が必要)
  • 工程ごとの作業時間の記録と、省力化指数・投資回収期間・付加価値額の算出根拠

専門家のサポートを受けるときに確認したいこと

支援を受けた場合は、申請時に支援者名と報酬などを記載します。口頭審査では経営者自身が答えるので、数字を一緒に組み立ててくれる専門家を選ぶと安心です。

依頼先を比べるときは、次の3点を確認してください。

  • 着手金の有無
  • サポートの範囲が採択までか、交付申請・実績報告を経て入金までか
  • ホームページに書かれた成功報酬と、入金までにかかる総額が同じか

他の補助金との使い分け

既存工程の省力化ではなく、新製品の開発や新市場への進出が目的なら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が合う場合があります。2026年度にものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金を統合した制度で、第1回の締切は2026年10月30日18時です。投資の目的から選んでください。

最新の公募情報(2026年10月17日確認)

  • 第9回:公募開始は2026年11月上旬、申請受付開始は12月上旬、申請締切は12月下旬の予定(事務局が公表した予定日程。採択発表日は後日公表)。申請に必要なGビズIDプライムの取得には時間がかかるため、事務局は早めの手続きを案内しています
  • 第8回:申請受付は2026年10月16日17時で終了。採択発表は2027年2月上旬の予定
  • 第7回:採択発表は2026年11月中旬の予定
  • 第10回以降:事務局は公募を年3〜4回予定しており、第10回の日程は詳細が確定次第公表されます
  • 過去の採択率:第1回68.5%、第2回60.9%、第3回66.8%、第4回69.3%、第5回61.5%、第6回63.9%(公式の採択結果ページの申請数と採択数から、採択数÷申請数で当社算出。今後の採択率を保証するものではありません)

まとめ

  • 事業計画は、業務の時間、省力化指数、人手の行き先、損益計画、投資回収期間の順に数字から組み立て、設備は最後に確定する
  • 公式の採択事例は、現状を時間・件数で示し、浮いた人手を増産や新事業に回して、売上の伸びまでつなげている
  • 賃上げは賞与も対象。ベースアップを続け、賞与で積み上げ、最終年度は決算賞与で還元すれば、3年計画で無理なく目標を置ける
  • 補助金は精算払い。入金までの流れを踏まえて、金融機関には計画段階から相談する

株式会社ウェルティイノベーションでは、公認会計士・税理士・行政書士の資格を持つ代表のもと、事業計画と申請書類の作成支援から、賃上げを織り込んだ損益計画、精算払いを前提にした資金繰りまで一体でご支援しています。補助金の採択支援額は累計13億円超です。報酬は着手金無料の完全成功報酬で、交付申請や実績報告など入金までの手続きもすべて含み、追加料金はありません。導入を検討している設備、投資額、現場の課題、導入希望時期をお知らせください。

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